2011年12月26日月曜日

将軍の娘〈上下〉 (文春文庫) [文庫] ネルソン デミル (著), Nelson DeMille (原著), 上田 公子 (翻訳)




再読。おもしろかった。
以下レビューコピペ:
アメリカ南部のジョージア州フォート・ハドリー陸軍基地。蒸し暑い8月のまだ夜が明け切らぬ時刻に事件は発見された。基地司令官キャンベル将軍の娘で、心理学作戦学校教官をつとめる、新兵募集ポスターのモデルになるほどの才色兼備の大尉アンが、基地内の射撃練習場で、全裸で四肢を杭に縛られ絞殺されたのだ。このセンセーショナルな猟奇殺人の捜査を任されるのが、たまたま武器横流しの囮捜査で潜入中の‘わたし’こと、合衆国陸軍犯罪捜査部(CID)捜査官のポール・ブレナー准尉と元恋人でレイプ専門の捜査官シンシア・サンヒル准尉。 

この‘わたし’、たえず軽口とジョーク、皮肉を叩きながらもやることは至って真剣。FBIの介入というタイムリミットのなか、文字通り寝る間を惜しんでシンシアとふたりで捜査に当たる。明らかになるのは、基地の存続と将校たちの将来を破滅させるほどの、アンの陰湿で淫靡な“裏の顔”だった。しかし、将軍の副官が文中いみじくも言うように、そこは一種の閉鎖社会、「正しいやり方」「まちがったやり方」のほかに「軍隊式のやり方」がまかり通る世界だった・・・。 

本書は、基本的には真犯人探しの謎解きフー・ダニットの体裁をとっているが、軍隊生活を実際に体験した者のみが書ける密室ともいえる特殊社会の実態、軍への女性の進出、親子のきわめてシビアな関係を、臨場感豊かにリアルに描いてゆく。そして死体でしか登場しないアンの悲劇ともいえる半生を存在感たっぷりに浮き彫りにした作品である。